ハピネス訪問看護ステーションでは、クライシス・プラン(CP-J)を積極的に活用した自立を促す支援に力を入れています。

「クライシス・プラン(CP-J)」と「WRAP(ラップ)」に含まれるクライシスプランは、どちらも精神的な困難に対処するための重要なツールですが、呼称が似ていることから混同されることも少なくありません。それぞれ、臨床の場ではそれぞれ異なる背景や目的を持っています。両者の違いを正しく理解することで、ご利用者に適した選択が可能になります。今回は、それぞれの概要や特徴、そして両者の違いを詳しく解説します。

◎WRAP(ラップ)とは?

WRAPは、Wellness(元気)、Recovery(回復)、Action(行動)、Plan(計画)の頭文字をとったもので、1997年にアメリカの精神的な困難を抱える当事者たちによって開発されたセルフケアのためのツールです。精神的な健康を維持しながら日々を充実して過ごすために、自分自身で計画を立て、実行していくことを目的としています。

WRAPは、当事者が自分の心身の状態を把握し、自分に合った対処法を見つけるプロセスをサポートします。特に、気分や体調が悪化する兆候に気づき、適切な行動を取ることで、危機的な状況を予防したり、早期に回復したりするための手段として活用されます。その中には、「クライシスプラン」と呼ばれる危機対応の計画も含まれています。

この「クライシスプラン」は、主に当事者自身のために作成されるセルフケアの計画です。具体的には、自分がどのような状態のときに危機に陥りやすいかを認識し、その際にどのような行動を取るべきかを事前に考えておくものです。必要に応じて家族や友人、支援者と共有することもありますが、基本的には自分自身で管理し、自分のペースで活用するツールです。

◎クライシス・プラン(CP-J)とは?

一方、クライシス・プラン(CP-J)は、イギリスの当事者団体が提唱した権利擁護の考え方を基盤として発展したツールです。このプランは、当事者が自分の権利や意志を尊重されながら、医療や福祉の支援者と協力して危機に備えることを目的としています。

CP-Jの特徴は、当事者だけでなく、医療や福祉の支援者、家族など、複数の関係者が共同で作成・共有する計画である点です。危機的な状況が発生した際にどのように対応するか、誰がどのような役割を果たすのかを事前に明確にしておくことで、迅速かつ適切な支援が可能になります。

具体的には、CP-Jでは以下のような内容を取り決めます。

 • 危機の兆候や予兆をどのように把握するか

 • 当事者が危機時に希望する対応方法

 • 危機の際の支援者の対応

これにより、危機的な状況でも当事者が自分の意思を反映した支援を受けられる仕組みが整えられます。

◎主な違い:セルフケアと協働の視点

WRAPのクライシスプランとクライシス・プラン(CP-J)の最も大きな違いは、その視点と作成プロセスにあります。

WRAPのクライシスプランは、当事者が自分自身で作成し、基本的には自己管理を目的とするものです。一方、クライシス・プラン(CP-J)は、当事者と支援者が協働して作成する「チームとしての計画」です。WRAPが「自分自身でのセルフケア」を重視するのに対し、CP-Jは「他者との連携」を重視している点が大きな違いです。

◎どちらが優れている?

WRAPとCP-Jは、どちらが優れているかを一概に比較することはできません。それぞれの目的や特徴に応じて、利用者のニーズに適したものを選ぶことが重要です。

たとえば、自分でできることを増やしたい、自分の状態を主体的に管理したいと考える方には、WRAPが適しています。一方で、支援者や家族と連携しながら危機に備えたいと考える方には、CP-Jが適しているでしょう。どちらも、当事者の「自立」と「回復」を支えるための有用なツールであることに変わりはありません。

◎まとめ:当ステーションでの取り組み

ハピネス訪問看護ステーションでは、クライシス・プラン(CP-J)を積極的に活用し、自立を目指す支援を行っています。当事者の意思を尊重しながら、支援者や家族と連携し、安心して生活を送るための環境づくりをサポートしています。