ハピネス訪問看護ステーションは、神戸市垂水区「拠点とする精神科に特化した訪問看護ステーションです。ハピネスでは、クライシス・プラン(CP-J)を積極的に活用し、自立を促す支援に力を入れています。

精神科に特化した訪問看護ステーションがクライシス・プランの活用に積極的に取り組むことで、スタッフに精神障害者の権利擁護に関する問題意識が高まります。このような変化は、単にご利用者の支援の質を向上させるだけでなく、ステーション全体の理念や運営方針にも良い影響を与えます。

クライシス・プランは、ご利用者の不調時に備えた具体的な対応策をあらかじめ計画するもので、ご利用者自身が主体的に関与するプロセスを重視しています。この計画作成の過程では、ご利用者の価値観や意思を尊重し、個別のニーズに基づいた支援が求められるため、自然と「利用者の権利」という視点が重要になります。たとえば、ご利用者が「どのような場面でどのように支援を受けたいか」をスタッフと話し合うことで、本人の意思決定を尊重する姿勢が求められます。この実践を通じて、スタッフはご利用者を単なる支援の対象として見るのではなく、主体的な存在として向き合う意識を深めることができます。

また、クライシス・プランの運用は、ご利用者の「不調の兆候」や「適切な対応策」を共有するだけでなく、本人の望む生活を維持するために何が必要かを考える契機となります。このようなプロセスを重ねることで、精神障害者が置かれた社会的な状況や偏見、差別といった権利侵害の問題に対する感度がスタッフの間で高まります。たとえば、ご利用者が日常生活の中で感じる制約や社会の中での孤立感について理解を深めることで、権利擁護の重要性がより具体的に意識されるようになります。

さらに、クライシス・プランの活用においては、ご利用者の意思を最大限に尊重することが基本的な考え方となります。このことは、意思決定の支援に直結し、ご利用者が自らの人生における選択肢を主体的に決められるようサポートすることを意味します。特に、精神障害者は社会的にその意思が軽視される場合が多い現実があり、これを補完する役割を担う訪問看護ステーションにとって、この意識を持つことは不可欠です。たとえば、本人の希望が周囲の意見と対立する場合であっても、できる限り本人の意思を実現するための手段を模索する姿勢が重要となります。

また、クライシス・プランは個別の支援計画である一方、ステーション全体の支援体制や理念にも影響を及ぼします。ご利用者一人ひとりのニーズや権利に向き合う過程で、スタッフ同士の議論や共有が進むことで、ステーション全体の価値観が「利用者の権利を守る」という方向にまとまっていきます。このような文化が根付くと、スタッフは日常業務の中でも権利擁護の視点を持ち続けることができ、訪問看護の質全体が底上げされます。

さらに、権利擁護に関する問題意識が高まることで、ステーションの外部との連携も進化します。医療機関や福祉施設、行政などの関係機関と協力する際に、ご利用者の権利を最優先に考えた意見を述べることで、関係者間の信頼が深まり、より良い支援体制を築くことが可能になります。たとえば、入院や治療の必要性を判断する場面で、ご利用者の意思や希望を最大限に反映するための調整役として機能することが期待されます。

以上のように、精神科に特化した訪問看護ステーションがクライシス・プランを活用することで、スタッフは利用者の権利擁護に対する感度を高め、よりご利用者本位の支援を提供できるようになります。この意識の向上は、ご利用者の生活の質を高めるだけでなく、地域社会全体の精神保健福祉の向上にも貢献する重要な変化といえると考えています。