神戸市を拠点とする精神科に特化したハピネス訪問看護ステーションは、ご利用者さんの自立に向けた支援を大切に考えています。

ハピネスでは、基本的にステーションでお薬をお預かりすることはしていません。

その理由は、お薬との向き合い方を他者任せにしてしまうと、ご本人が「自分で飲む」「自分の生活を整える」という大切な経験を積む機会が失われてしまうからです。薬は、医師からご本人に処方されたものです。そのため、ご本人自身がどう薬とつき合っていくかを考え、自分の力で調整していくことが大切だと私たちは考えています。

「薬を預かってほしい」というご相談を受けることもありますが、そうしたケースでは、過量服薬(薬を一度にたくさん飲んでしまうこと)を心配している方が多いように思います。精神科訪問看護における服薬支援とは、「薬を預かる」ことではなく、「過量服薬に至りそうなサインを一緒に見つけて、それにどう対応するかを考えていくこと」だと私たちは考えています。

もちろん、すぐにうまくいくわけではありません。でも、何度も一緒に考え、実際に試してみることを繰り返していく中で、「今回は薬を飲みすぎずに乗り切れた」という日がきっと訪れます。そしてご本人が、「自分なりに対処したほうが、過量服薬をするよりも、自分らしく生活できる」と感じられるようになったとき、自然と過量服薬をコントロールできるようになると私たちは信じています。

ご本人から「薬を手元に置いておきたくない」と相談されたときには、訪問薬局のサービスをご案内しています。訪問薬局では、薬剤師がご自宅まで必要な分のお薬を持ってきてくれたり、薬について詳しく説明してくれたり、ご本人の思いを直接聞いてくれたりします。そうした関わりが、過量服薬の予防につながることも多いです。最近では、服薬支援ロボットを活用している方もいらっしゃいます。

もし、また過量服薬してしまうことがあったとしても、支援者があわてる必要はありません。「何があってそうなったのか」「どうすれば違う対応ができたのか」を、ご本人と一緒にもう一度考えていけばよいのです。

過量服薬をやめたいという思いは、ご本人の中にもきっとあります。でも、薬の管理を他人に任せてしまうと、そこに「自分で選ぶ」「自分で考える」という関わりがなくなってしまいます。まるで、問題を解いたのに答えが返ってこないテストのようなものです。それでは経験から学ぶことができません。

支援する私たちにも、「どうすればご本人が自分で関われるようになるか」を考える姿勢、つまり“発想の転換”が求められているのだと思います。

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