精神科訪問看護は、ご利用者一人ひとりがその人らしい生活を送るためのサービスです。中でも、精神障害を抱える方々が自身の権利を守り、適切な意思決定を行えるようサポートすることは、非常に重要な使命の一つといえます。ハピネス訪問看護ステーションでは、権利擁護と意思決定支援を柱としたケアを提供し、ご利用者が主体的な生活を送るための環境を整えられるよう努めています。以下、ハピネス訪問看護ステーションの取り組みを詳しくご紹介します。
◎精神障害者の権利擁護とは?
精神障害者の権利擁護とは、障害を持つ方が社会で平等に生きる権利を守るための取り組みを指します。国連の「障害者権利条約」でも、精神障害者が他の人々と同等の権利を持つことが明記されており、日本国内では障害者総合支援法や成年後見制度などが権利保護の仕組みとして存在します。しかし、精神障害者はしばしば誤解や偏見にさらされ、自身の意思や権利が尊重されない場面が少なくありません。
ハピネス訪問看護ステーションでは、このような社会的障壁を乗り越えるため、ご利用者の意思や希望を尊重し、権利を守るための支援を行っています。訪問看護師は、ご利用者が抱える課題や不安に耳を傾け、必要な情報を提供しながら、ご利用者が自らの意思で選択し行動できる環境を作る役割を担っています。
◎クライシス・プラン(CP-J)の活用による意思決定支援
意思決定支援の一環として、ハピネス訪問看護ステーションでは「クライシス・プラン(CP-J)」を積極的に活用しています。クライシス・プラン(CP-J)は、ご利用者が精神的不調に陥った際の対応方法を事前に計画し、自身や周囲の支援者が迷わずに対応できるようにするためのツールです。このプランは、ご利用者自身が主体となって作成することを基本とし、支援者との対話を通じて具体的な内容を決めていきます。
クライシス・プラン(CP-J)の作成プロセスでは、以下の点を重視しています。
1.ご利用者の自己理解の促進
自分がどのような状況で困難を感じるのか、その際にどのようなサポートが有効なのかを一緒に考えることで、自己理解を深めます。
2.具体的な行動計画の策定
危機時に取るべき具体的な行動や、誰にどのように助けを求めるかを事前に決めておくことで、不安を軽減します。
3.支援者との連携強化
プランの内容を支援者や家族と共有することで、迅速かつ適切な支援が可能になります。
これらの取り組みを通じて、ご利用者が自分の意志を表明し、状況に応じた最適な選択を行える力を育むことを目指しています。
◎訪問看護師の役割
訪問看護師は、権利擁護と意思決定支援を実現する上で欠かせない存在です。ご利用者との信頼関係を築き、日々の訪問を通じてご利用者の状態やニーズを把握するだけでなく、社会資源の活用や関係機関との連携を図ります。また、ご利用者が適切な医療や福祉サービスを受けられるよう、アドボカシー(代弁者)としての役割も果たします。
さらに、意思決定支援を行う際には、ご利用者が「自分のために最善の選択をした」と感じられるよう、共感的なコミュニケーションを大切にしています。このような姿勢は、ご利用者の自己肯定感を高め、主体的な生活を送る土台となります。
◎地域社会との連携
ハピネス訪問看護ステーションでは、地域社会との連携も積極的に行っています。精神障害者が地域で安心して暮らすためには、地域住民や関連機関の理解と協力が欠かせません。そのため、ハピネス訪問看護ステーションでは地域住民向けに精神科訪問看護に関する勉強会を行い、精神障害者への支援に関する正しい知識の普及に努めています。また、地域の医療機関や福祉施設と緊密に連携し、ご利用者が必要な支援をスムーズに受けられる体制を整えています。
◎まとめ
精神障害者の権利擁護と意思決定支援は、精神科訪問看護における重要な使命の一つです。ハピネス訪問看護ステーションでは、クライシス・プラン(CP-J)を活用した支援を中心に、ご利用者が安心して暮らせる環境を提供しています。これからもご利用者一人ひとりの「その人らしさ」を尊重しながら、支援の質を高め、地域社会と共に歩んでまいります。