神戸市を拠点とする精神科に特化したハピネス訪問看護ステーションでは、クライシス・プラン(CP-J)を積極的に活用した支援に力を入れています。
近年、精神科医療福祉の現場でクライシス・プランが重要視されるようになっています。クライシス・プランとは、精神的な不調や危機が発生した際にどのように対処するかを事前に決めておく計画のことです。特に、精神科訪問看護においては、ご利用者が地域や自宅で安心して生活を続けられるよう、クライシス・プランの活用が求められています。
今回は、なぜクライシス・プランが精神科訪問看護において注目されているのか、その背景やメリット、実際の活用方法について解説します。

1. クライシス・プランとは?
クライシス・プランとは、ご利用者が精神的な不調や危機に陥ったときに備えて、本人・家族・支援者が事前に作成する対応計画のことです。不調時のサインや対処法、連絡すべき支援者などが記載されており、病状の悪化を防ぎ、適切な対応をスムーズに行うことを目的としています。
特に、精神疾患を持つ方にとっては、再発や症状の悪化を防ぐことが生活の安定につながります。そのため、クライシス・プランは、本人の意思を尊重しつつ、適切な支援を受けられるようにする重要なツールとなっています。
2. 近年、クライシス・プランが注目される理由
2-1. 精神疾患の長期化と地域生活の重要性
近年、精神疾患の治療は入院中心から地域生活を支える方向へと変化しています。精神科病院の入院期間の短縮化が進む中、地域での支援がより重要になっています。
精神科訪問看護では、ご利用者が自宅で安定した生活を送るために、症状の悪化を予防し、適切な支援につなげる役割を担っています。その中で、クライシス・プランは、危機を未然に防ぐ手段として有効であることが認識されるようになりました。
2-2. 早期介入の重要性
精神疾患の症状は、ストレスや環境の変化によって悪化することがあります。しかし、症状の初期段階で適切な対応をすれば、悪化を防ぐことができます。
クライシス・プランでは、本人が「どのような状態になったら不調のリスクがあるか」「その際にどのような対応をしてほしいか」を事前に決めておくため、早期介入がしやすくなります。訪問看護師や家族、その他の支援者がプランに沿って適切に対応することで、入院を回避したり、症状を悪化させずに済む可能性が高まります。
2-3. 本人の主体性を尊重したケア
精神科訪問看護では、ご利用者の「自己決定」を尊重することが大切です。従来、精神的な不調や危機が発生した際には、医療者や家族、その他の支援者が判断して対応するケースが多く見られました。しかし、その方法では「自分の意思が尊重されなかった」と感じる方も少なくありません。
クライシス・プランは、本人が「自分にとって最善の対応」を事前に決めるプロセスを含んでいます。これにより、「自分の人生は自分で選択できる」という感覚を持つことができ、精神的な安定にもつながります。
3. クライシス・プランの内容の例
クライシス・プランには、以下のような内容が記載されます。
1. 不調のサイン(例:眠れない、食欲がなくなる、イライラする など)
2. 不調時に有効な対処法(例:音楽を聴く、散歩する、信頼できる人に相談する など)
3. 自分の支援者(例:訪問看護師、主治医、家族、地域の相談窓口 など)
4. 気をつけた方が良いストレス(例:睡眠不足、疲労 など)
5. 要注意時の希望や計画(例:どうしてもつらい場合は〇〇に連絡する など)
これらを事前にまとめておくことで、いざというときに適切な対応ができるようになります。
4. ハピネス訪問看護ステーションでのクライシス・プラン活用
当ステーションでは、クライシス・プランを積極的に活用し、ご利用者が自立した生活を続けられるよう支援しています。特に「就労を目指す方」 にとっては、ストレスや体調の変化を事前に把握し、適切な対応をとることが重要です。
例えば、あるご利用者は、不安が強くなると体調を崩しやすい傾向がありました。クライシス・プランを作成し、「不安が高まったときの対応」や「相談できる人」を明確にすることで、安心して就職活動を続けることができました。
5. まとめ
クライシス・プランは、精神科訪問看護において、ご利用者の不調や危機を未然に防ぎ、安定した地域生活を支える重要なツールです。近年、精神疾患の長期化や地域支援の必要性が高まる中で、クライシス・プランの活用が注目されています。
ハピネス訪問看護ステーションでは、ご利用者一人ひとりに寄り添い、クライシス・プランを活用した支援を行っています。クライシス・プランを活用し、安心して地域で暮らせる未来を一緒に作っていきましょう。
