ハピネス訪問看護ステーションではクライシス・プラン(CP-J)を積極的に活用した自立を促す支援に力を入れています。

クライシス・プラン(CP-J)は、個人が自身の生活や健康における危機的な状況に備え、冷静かつ適切な対応を取れるようにするための計画書です。この計画は、本人を中心に、家族や支援者、医療従事者などが一緒に作成します。クライシス・プランは、問題が軽度な段階から深刻化するまでの過程を整理し、それぞれの状態に応じた対応策を事前に決めておくことで、本人の自立と安心を支えることを目的としています。

近年、精神科訪問看護において、クライシス・プラン(CP-J)は特に重要なツールとなってきています。精神的な状態が悪化する際には、本人が危機に気づきにくかったり、適切な対応が難しくなったりすることがあるため、あらかじめ対処法を可視化しておくことで、安心感を持って生活を送ることができます。

◎「風邪のクライシス・プラン」を例に説明

以下では、風邪をテーマにしたクライシス・プランを例に、クライシス・プラン(CP-J)の構造と効果について説明します。

1. 目標の設定

最初に、プランの全体的な目標を設定します。例えば、画像では「風邪を引かず元気に生活する」という目標が掲げられています。このように具体的で実現可能な目標を設定することで、取り組む方向性が明確になります。

2. 状態の把握

次に、自身の状態を「安定した状態」「注意状態」「要注意状態」の3段階に分類します。

安定した状態: 日常生活が問題なく送れる状態(例:体が軽い、食欲がある、よく眠れる)。

注意状態: 軽い異変を感じる段階(例:喉の違和感、寒気、ぼーっとする)。

要注意状態: 明らかな体調不良が発生し、早急な対応が必要な段階(例:熱が出る、食欲がなくなる、何も考えられない)。

この分類により、問題がどの段階にあるのかを本人や支援者がすぐに把握できるようになります。

3. 対応策の明確化

各状態に応じた対応策を明記します。

安定した状態では、健康を維持するための予防策を重視します(例:栄養バランスの取れた食事、手洗いの励行、十分な睡眠)。

注意状態では、軽度の異変に対処する行動を具体的に記載します(例:うがいをする、体を温める、早めに薬を飲む)。

要注意状態では、体調が悪化した際に必要な行動を明確にします(例:仕事を休む、医師を受診する、しっかり休息を取る)。

このように具体的な行動を記載することで、本人だけでなく支援者も迷わずに行動できるようになります。

4. 支援者の役割

クライシス・プラン(CP-J)では、本人以外の支援者の役割も重要です。支援者がどのように関与すべきかを具体的に示します。

安定した状態: 本人の健康維持を見守り、励ます(例:趣味を一緒に楽しむ)。

注意状態: 本人に声をかけて、異変を見逃さない(例:部屋の温度管理を手伝う、薬を勧める)。

要注意状態: 医療機関への同行や必要な準備をサポートする(例:受診に付き添う、栄養のある食事を準備する)。

これにより、本人と支援者が一体となって危機的状況に対応できるようになります。

5. 支援体制の明示

さらに、支援体制をリスト化することで、緊急時に誰に連絡すればよいのかが一目でわかります。例えば、「医療」「活動」「生活」「その他」の4つのカテゴリに分けて、関係者の名前や役割を記載します。

◎クライシス・プラン(CP-J)の活用による効果

1. 安心感の向上

クライシス・プラン(CP-J)を作成することで、本人は自分の状態を把握しやすくなり、適切な対処法を選べるようになります。また、支援者にとっても対応方法が明確になるため、過剰な不安を感じずにサポートできます。

2. 早期対応が可能に

注意状態の段階で適切な行動を取ることで、状態の悪化を防ぎ、要注意状態に至るリスクを減らせます。

3. 自立支援

クライシス・プラン(CP-J)は、本人が自分自身の健康管理に積極的に取り組む意識を育て、自立を促進します。

◎精神科訪問看護での応用

精神科領域では、体調の変化だけでなく、感情や思考、行動における変化にも対応する必要があります。例えば、「不安が高まる」「眠れなくなる」「考えがまとまらない」などの状態を「注意状態」として記載し、対応策を事前に決めておくことで、本人や支援者が適切に対応できます。

また、クライシス・プラン(CP-J))を作成するプロセスそのものが、本人のセルフケア能力や問題解決能力の向上につながります。ハピネス訪問看護ステーションでは、このようにクライシス・プラン(CP-J)を積極的に活用することで、ご利用者の生活の質を高める支援を行っています。

◎まとめ

クライシス・プラン(CP-J)は、危機的状況に備えた包括的な支援ツールです。今回紹介した「風邪のクライシス・プラン」を参考に、精神科訪問看護の現場でもクライシス・プラン(CP-J)の導入がさらに進めば良いと考えています。事前に準備を整えることで、安心して日常生活を送ることが可能になります。